RADIOHEAD
今回はとにかく自信があったんだ
この「レディオヘッドっほくない感じ」が
凄くよかったんだと思うな
今回はとにかく自信があったんだ
この「レディオヘッドっほくない感じ」が
凄くよかったんだと思うな
世界中で最も次の活動が待たれているバンドニレディ才へッド。
「みんなが思ってるよりも早く、新作はできると思う」という予告通りに、
6枚目となるアルバム「ヘイル-トウ一,ザ-シーフ」が遂に完成!!
全14曲、56分41秒一極限まで突き詰めたバンド,サウンドの新世界
“進化し続ける5人”の凄味が、このニュー-アルバム一杯に溢れている。
壮大な実験が生み出したあの“双子アルバム”の先に見たサウンドスケープとは何だったのか?
現代ロック界最高のバンドは今、音楽とどのように向き合っているのか?
トム,ヨークXコリン,グリーンウッドの最新インタビューと全アルバム段ビデオ解説で
新作の全貌と、ここに至る軌跡を徹底解明した総力特集!!
「新作『ヘイル.卜ウー.ザ.シーフ』は、 レデイオヘッドがこれまでに作った中で、最 も気楽で肩の力を抜いた、自然体のアルバム である」
このクラスなら最早当たり前の厳戒態勢の 中(既に完成前の音源がネット上を飛び交っ て、メンバ一をガッカリさせているが)、試 聴に3回足を運んでアルバムを聴いた。実は なかなか頭の中で全体像が結ばなかったのだ が、3回目を聴いて達した結論が、これだ。 衝撃度の高さという点で見れば、正直言って 「0ドコンピュータ一」や「キッド戎」には及 ばないかも知れない。しかし、これまでの軌 跡をしっかりと踏みしめながら同時に新しい 側面も加えていくという“進化し続けるバン ド’’の凄味を、アルバム一杯に湛えている。 そしてそれこそが、“レデイオヘッドらしさ’’ なのだろう。
「キッド八」「アムニージアック」という "双子アルバム”のリリース、それに伴うツ ア一、そしてツアーの楽しさ/^クオリティの 高さが生んだライヴ「アイ,マイト,ビ 一,ロング」。そんな充実しまくった活動の 後、前作から約2年のインターバルでの新作 「ヘイル.トウ一.ザ.シーフ」が完成〈6 月2日日本先行発売)。録音はほぼ8週間、 ロサンゼルスと自分たちのスタジオで。絶好 調の勢いに乗ったまま、細かいことを気にせ ずに勢いで作ったに違いない。これまでに経 験し蓄積したものを、実に素直に放出してい て、所々に過去の曲を彷彿させるフレーズや 音の質感、サウンド全体の雰囲気も散見され る。きっと以前だったら「これはもうやった ことだから」「もっと新しいものを生み出さ ないと」と排除していただろうと思われる要 素の数々。しかし、そういうことを気にせず 進めた感じだ。これもまた、自分たちの一部 なんだから、と。
そうやって一番自然に出るものニバンド, サウンドを、これまでの冒険を通じて音に銳 敏になった、今の彼らならではの味付けで提 示すること。これだけでもう、充分に“新し い”音楽が生まれてしまうという事実。アル バム全体を初めて通して聴いた時、僕は担当 ム压円に「やっぱ、恐ろしいバンドですねえ」 くらいしか言えなかったのだが、後で資料を よく見たら、彼女も「恐ろしい作品」と書い ていて思わず苦笑した。“最も気楽でリラッ クスした、自然体のアルバム’’と感じさせな がらも、“恐ろしいバンド’’と言わせてしま う。これがレディオヘッドだ。
「レディオヘッドは、バンド,サウンドに回 帰した」
これは本当だ。まず初期段階に新作から先 行で聴かせてもらった5曲は、どれも有機的 なバンド,サウンドを展開する曲ばかりだっ た。ただし、あくまでもサウンドの編集では なく演奏を中心とした“バンド,サウンド” であって、「パブロ.ハニー」や「ザ.ベン ズ」のような“真っ当なギター,ロック’’で は決してない。ここ3作で“音そのもの’’に 対しての感度を極限まで磨いてきた彼らのこ と。この“バンド,サウンド”は、明らかに 新しい響きを持って鳴っている。
例えば“2+2=5”や“ゴー,卜ゥー. スリープ”のギター,サウンドを取っても、 「ギターにはまだまだ可能性がある!」と改 めて思わせてくれる。“ゴー.卜ウー,スリ ープ”のクライマックスで斬り込んでくるギ ターの音には、鳥肌が立った。先行シングル “ゼア、ゼア”にしても、楽曲はレディオへ ッドにしては普通にも思える.が(もう一度書 いておこう。レディオヘッドにしては、だ)、 音の一つ一つが持つ表情が尋常ではない。
そして、アルバムの全体像。以前ジョニ ―,グリ一ンウッドが「アルバムの半分は前 作からで、残りの半分は次の作品に繫がるん だ」と語っていたように、"バンド.サウン ド”の可能性を追究した面に加えて、「キッ ド八」「アムニージアック」で手に入れたよ うな、既視感がある表現もちょこちょこ顔を 出す。“スィット,ダウン。スタンド,アッ プ”では、覚醒し切ったシャープなドラムが リードする人力ポストロックを。“バックド リフツ”や“ザ.グローミング”では、プチ プチズンズン言うエレクトロニ力を。“セイ ル.トウ.ザ.ムーン”や“ウィー.サッ ク,ヤング,ブラッド”では、古めかしいピ アノが醸すキャバレ一,ミュージックのいか がわしさを。しかしもちろんそこには、「う わっ、何だこれ!」と本能がピクピクするよ うな、そして脳天にガッツリ振り下ろされる ような、“新しい音” “衝撃のサウンド”がー 杯まぶされているのだ。
トム.ヨークは、正々堂々と歌っている。 件の“双子アルバム”では「自信をなくし た」ために自分の声を加工することに執心し ていたが、吹っ切れたようにしっかりと歌っ ている。もちろん、相変わらず明るく楽しく は決してないが、どん底のような悲壮感や絶 望感は今の彼の歌にはないようだ。深く、高 く、透明。剥き出しではあるが、ゆとりや余 裕のようなものさえ感じさせる。
そしてそれは、バンド全体に関しても言え るのだ。エッジがメチャクチャ立っていたり、 何かが激しく吐き出されたりする瞬間は、確 かにいくつもある。しかしこのアルバムを満 たしているのは、感党的,知覚的な旅がくれ る不思議な充足感、もうやりたいことをやる だけだという自信、もちろん爽やかではない が、ある種の開放感、そういったものだ。あ と個人的に感じたのは、「曖昧なものを、曖 昧なままにしておくのも、時にはいいね」と いう感覚。とことん突き詰めることを続けて きた彼らが、そんな境地に至ったとしても、 決して不思議ではないだろうとも思う。
――「キッド八」と「アムニージアック」の 2枚を出して、ツアーして、ライヴを出 して、とかなり精力的に動いてきたあなたた ちが、2001年10月の日本公演で一段落した 時はどんな心境だったんですか。充実感と達 成感で一杯でした?
トム,ヨーク(Vo,G) 「あの時のことはよく 覚えてるよ。だって、ナオミ,キャンベルと 同じ飛行機だったんだよね、僕たち」
コリン.グリーンウッド(B) 「ええっ、そう だったっけ?」
トム 「何だ、覚えてないのかよ。ナオミもシ ベリア経由の飛行機に乗ってたんだよ。僕は コックピッ卜まで入れてもらえたからよく覚 えてるんだ」
コリン 「だったかな。すっかり忘れてたよ」 トム「ほら、あの時の帰りの飛行機の中はも うガラガラでさ……」
コリン 「僕には日本でのツアーは凄く楽しん でやれたっていうIバ、思I、出があったな」
トム 「とにかくプレイすることが楽しくて仕 方がないって感じで、凄くよかったよ。僕ら はこんなにツアーを楽しめるのかってことが 実感として伝わってきたね」
コリン 「とにかく充実感があった。期間も規 模もちょうどよかったんだ」
――その後ブレイクを取ったとはいえ、思っ ていたよりも早く新作「ヘイル,トウ一. ザ,シーフ」が完成しましたね。この間のツ ア一の充実した状態をそのまま持ち込んだっ て感じですか。
トム 「新作ができるのってそんなに早かった かな?レコーディングに入る前に6力月間 の休暇は取ったんだ。レコーディングに入っ たのが9月で……レコーディングしてたのは 6~7週間くらいだった。そう考えると、や っばり凄いスピードだよね」
コリン 「2力月くらい何にもしなかったこと もあったから、本気出して頑張ってたのが正 味3 ~ 4週間というところじやないかな」
トム 「うん、だろうね。もうグチヤグチヤだ ったから」
――あの双子アルバムにまつわる大仕事を経 た後、そもそもどんなヴィジョン/イメージ を持って新作「ヘイル,卜ウー,ザ,シ一 フ」 の制作に臨んだんです?
トム 「レコーディングする前にどんなヴィジ ョンやイメージを持ってたかってこと?音 楽的なことを言えば、そこからやれることを やってみたかったっていうだけかな。そうい う姿勢で臨んだのは初めてのことなんだよ。 なるようになれって感じだよね。ツアー中は 学んだことがいっぱいあってさ、曲をどうプ レイすべきかもよくわかってきたんだ。で、 スタジオでは沢山曲作って……これもライヴ でいろんなことを勉強できて、プレイへのア プロ一チが変わっていったっていうか、凄く ためになったと思うね」
――その結果、6枚目になるこのアルバムも 予想の範嘛に収まるようなものではない素晴 らしい作品になりましたね。あなたたちはど んなアル/《ムに仕上がったと感じてますか。
コリン 「え一、これって7枚目だよね?」
トム 「何寝ぽ丨ナてるんだよ。6枚目だよ」 コリン「さっきまで7枚目だとばっかり思っ ていたよ(笑)」
トム 「(笑)2?とかも入れちゃってるんじゃ ないの?で、どんなアルパムかっていう と、レコーディングがあまりに早すぎて何を したのか覚えていないって感じなんだ。最初 の2週間はセッションして、でもプレイバッ クする必要はなかった。なぜって全部覚え込 んじゃってたからね。で、ある時点で一曲レ コーディングして、元気なエネルギ一一杯の 感覚でレコーディングを完了させようってこ とになって……だからレコーディング終了と 共にアイディアがなくなってしまったってい う感じだね」
――「キッド八」で“脱バンド”を感じさせ つつも、「アムニージアック」では逆に“バ ンド回帰’’の方向性を思わせました。更にこ の新作では約3分の2がバンド,サウンドを 中,0とした曲なわけですが、この間にあなた たちの中で“バンド"に対する意識の変イ匕は ありました?例えば、改めてバンドの可能 性を再発見したりとか?
トム 「う〜ん……」
コリン 「それって考え過ぎだよ。全体という より、一曲ずつで考えていくって感じだった から、そういう考え方はできないな。それっ てェグゼクティヴ.プロデューサーがよく考 えることなんだよ」
トム 「へえ、そういうもんなの?」
コリン 「ェグゼクテイヴ八公只の担当者がそ ういう考え方するのが定番なんだ」
トム 「で、凄くギャラの高いプロデューサ一 を起用しちゃっていい気分になって、 クレジ ツトにもしっかり登場してくるってパターン だろ(笑)」
コリン 「それって、一般的な見方ってやっだ ょ」
トム 「だから丨業たちには聞かなI、で欲しI、な」 コリン「僕ら自身は草原の上から下を見下ろ すっていうより、アリ地獄の中にいるアリの ような感じじゃない?」
トム 「僕らはメッセージを発する雄パチで、 単純に反応してるだけってこと」
――なるほど。前の2枚ではエレクトロニッ クの要素やスタジオでの編集的手法を大胆に 取り入れていたのに、2001年の来日公演で はそういったものも完全に“バンドとして” 表現していて感動したんですよ。あのツアー であなたたちが新たに掴んだもの、手に入れ たものは何だったんです?
トム 「何が一体僕らにできるのか?しよう としているのか?人間的なアングルで考え られるものが欲しくて、それが一体何なのか が発見できたんだ。今日プレイすることを学 ベる、そういうプロセスの中に僕らはいるん だってことを思ったね。そして、思ってる以 上に僕らにはそれができるんだってこともわ かった。まさに目からウロコって感じで、も っと可能性を広げていけるんだっていう意味 があったんだ。聴き返してみて、[へえ、凄 いことやってたんだ』って驚いたから、ライ ヴの2?を出すことになったんだと思う。ど んなに変化したかを今聴くことができるんだ と思ってね。スタイルっていう意味じゃ、エ レクトロニクス、シンセサイザーやシーケン サ一を使ったけど、ライヴ,パンドのヴォキ ャブラリーを使おうってことを選択したの さ。だから自信も湧いてきたんだよ」
コリン 「うん、僕も同感。日本にいる時に今 回の曲を書き始めたんだ。"ゴー.トゥー-ス リーブ” なんて大阪にいた時にプレイし始 めてたしね。おかしなことに最初のパートは 凄くいいんだけど、2番目のパートがうまく いかなかった。ところが、凄く気に入ってた 最初のノ、。一 トが少しばかり欠けちゃった時に、 素晴らしい2番目のパー卜が生まれたり…… 身構えないでリラックスしてると、期待して いなかった新!^いものが生まれてくる。それ も偶然にね」
――“ナイヴズ.アウト”(「アムニージアッ ク」収録)を作った時に、「『ギターと歌だけ なんて、どこか間違ってる』という強迫観念 に囚われて行き詰まったけど、曲の良さに気 づいてそのまま仕上げた」とトムは首ってた けど、そういうところが今回の方向性の出発 点だったと考えられますか。
トム 「すべては偶発的に起こるんだ。何でも Iパ、からその源泉となるものが欲しければ、 自由に使ってみるってことにしたまでさ。楽 器の上に楽器を重ねることに価値惑は見出せ なかった。スタジオの中でプレイしてどうな るかが楽しみで仕方なかったんだよ。他人が 何を言おうと気にしないで思い通りやってみ るってこと。ドラム.マシーンが使いたくて 曲をそれに乗せて書きたかったら、睹路する 必要はないんだ。こんなに混滩とした音楽マ 一ケットのことなんて、僕には到底考えられ ないし、分析することもできないわけだし ね。そんなことは問題外さ。そうやって曲は 生み出されていったんだ」
――トムは、結構早い段階から曲のデモをメ ンバーに渡していたんですよね。前に「レノ ン故マッカ一トニー風の手法で曲を窨いてい た頃に戻りたいとも思う」とも言ってました けど、いくつかそういう所に立ち返って作っ た曲もあるのでは?
トム 「とは言い切れないね。ある意味ではと ってもシンプルで直接的だったけど、それは ビートルズ.スタイルの楽器編成を使うって ことじゃない。自分が考えてみた曲作りをす る時の姿勢みたいなものだったんだ」
コリン 「トムが曲の00を僕らにくれたけど、 それはどれも演奏パートとかがあまり入って なくて、アレンジにもそれほど手が加えられ ていないものだったんだ」
トム 「それには深い意味はなくてね。エド 《,オブライエン:卩)が『これから6力月 間オフになるから』って百ってたから、あん まり複雑じやなI、曲の方が14、かなって考え ただけなんだよ」
コリン 「中立な感覚で作ったんだ。トムは曲 を中立な感覚で表現してたからね。でも凄く エキサイティングだった。誰が聴いてもヱキ サイティングで、どこか違うってことを感じ させるものだったよ」
トム 「家に帰ってもみんなが“ミクサマトー シス’’のことを『この曲絶対やろうよ』って 言ってたのは忘れられなかったよ。正直言っ て、レコードを作り始めて完了させるまでの すべてのプロセスの中で最もエキサイテイン グな日だったな。僕はこの曲にはほとんど手 を加えたくなかったんだ。『これだ!これ でIバ、!これでIバ、んだ!』って感じでさ」
コリン 「いや、他にもあったじやないか。道 端に転がってるようなのが……集合的な情熱 に欠けてて、欲求不満とかから生まれる歌と か、みんなが愛してくれるような曲じやない って感じの……例えば"パックドリフツ”み たいに」
トム 「“パックドリフツ”はまだ熟してない と思うよ。ツアーでプレイしていくうちにも っと良くなるんじやないかな。そういう未加 エな素材があって、どの曲も早くプレイして くれって待ってるような感じがするんだ」
コリン 「あんまり考えないで生まれてきた曲 だからいいっていうのがあるんだよね」
トム 「今回のアルバムに関してはあんまり考 えないで作ったんだよ。でも歌詞に関しては いろいろと反応してくると思うけどね。だか らさっきから繰り返し言っているけれど、と にかく偶発的に生まれてきた曲ばかりなん だ。一瞬立ち止まって考えてみるってことを してたら、こういう曲は生まれてなかったと 思うな。じっくり考えて、『このレコードの ボイントは何だろう?』なんて思いながら作 ってたら、このアルバムは全く違うものにな ってただろうね」
――あなたたちのエンジニア的スキルの向上 が作品のクオリティにある程度繫がっている 部分もあると思うんですけど、その辺はどう なんでしょう?自分が持ってるイメージを、 よりスムーズに形に出来るようになってきた といったような。
トム 「エンジニア的スキルの向上っていうの はないんじやないかな。それは僕らじやない 人たちがやってI、るわけだから」
コリン 「でも、マイクをセッティングするテ クニックは上昇したと思、うよ」
トム 「確かに。10センチの間隔を開けるとか っていうのがわかってきたよね」
コリン 「スピーカーから離さなけれは^:らな いってことがわかったもんね。それにスタジ オじやない所でみんなと集まってレコーディ ングしてみたいって気持ちが僕らにはあるん だ。だってレコーディング.スタジオってい うのが家だったりする時代だろ?今回のニ ュ一.アルパムのサウンドや曲の多くは、ト ムのノー 卜型パソコンやコンピューターから 生まれたものなんだよ。どれもこれも凄くい いサウンドになってるし、だから本当に無駄 な時間を費やす必要がないんだ。そういう点 が凄くエキサイティングなのさ。スタジオへ 足を運ぶっていう手間をレコーディングのプ ロセスから省I、てくれてるんだからね」
トム 「よくこういうジョークを飛ばしてたよ な。みんなはお互いに顔を合わせないままメ 一ルでやりとりしながらサウンドが飛び交っ ていく。時には電話で音を聴いたりする。つ いに僕らはヴァーチャルなバンドになってし まう。姿を現わすことも顔を見ることもなく なり、ヴァーチャルなギグをやるようになっ て、そしてギャラの支払いすらヴァーチャル なものになっていく……っていう(笑)」
――(笑)。今回ジョニーはかなり楽器に凝 ってるみたいだけど、コリンはどうですか。
コリン 「ジョニーっていつも何か新い、楽器 を買い求めてるからな。トムがよく言ってる よね、『たとえ何であっても、欲しいと思え ば必ず手に入るものなんだ』って。僕は古い 楽器を使うのが好きなんだけど……ジョニ一 は凄いよ。古い機材でも上手に使いこなすん だから。結局、機能をどう活かすかが勝負な んだ。テープ.マシーンかシーケンサーか、 原理はいつでも同じなんだよ。肝心なのはそ れをどう使いこなすかってことさ。その日の 気分にもよるけど、どうも僕はそういうのが 苦手で、お手上げ状態になってしまうことが 多いんだ』
――以前ジョニ一は「アルバムを作るとその 半分は前作からの流れで、残りの半分は新し いもので次に繫がる」と言ってたんですけ ど、今回もそういう実感はありますか。
トム 「そうだね。でも必ずしも進歩してるっ て意味じゃないけど」
コリン 「僕らのレコードにはいろんな曲が入 ってるってことが嬉しいね。だから今回のア ルバムも凄く好きなんだ」
トム 「そこ力樓らの最大の弱点であり、最大 の強みでもある」
――じゃあ、今回手に入れた“新しいもの” とは何だったと思う?
トム 「“ア,パンチ,アット,了.ウエディ ング”は興味深い曲だったね。今までにやっ たことのないような曲で、聴く人たちは[パ ンドが違う感じの曲をやってる』って思うん じやないかな。以前の僕らには、とてもこん なにレイド,パックした曲はできなかったと 思う。5分の曲をまるで3分間のように聴か せるってこともできるんだ。まあでも、総合 して言うのは難しいけど」
――レコーディング自体は去年の9月1日に 始め、全体の制作作業はとても手早く行なわ れたんですよね。いつも豊富過ぎるアイディ アと格闘してしまうあなたたちが、スピーデ ィに、しかも短く簡潔な曲が揃ったアルバム を仕上げることができた背景には一体何があ ったんでしょう?
トム 「何故かっていうと、僕らがッアー(去 年のスペインとポルトガルのツアーのこと?) に出て曲をプレイしたからだよ。つまり、ス タジオでコッコッと仕上げるのではなく、パ フォーマンスできる曲をレコ一ディングした いって気持ちが強かったからなんだ。ナイジ エル〈,ゴッドリッチ:プロデューサー)が スタジオの片隅でレコーディングしてる時に、 僕らは別のところでプレイしてるって感じだ った。凄く伝統的な方法でレコーディングを したんだよね。彼は『本当にありがとう』っ て言って……」
コリン 「で、僕らはみんな昼飯を食いに行っ て、また帰ってきてレコーディングし始め る。今回はレコーディングした後にちょっと ゴチヤゴチヤになってやろうって思ってたん だよね」
トム 「ゴチヤゴチヤになったけど、『いいん だ、これで』ってことになったんだよ」
コリン 「でもさ、どの曲もみんなコンピュー ターにファイルされていて、すっごくよかっ たんだ」
トム 「そう、メチヤメチヤにねじり曲げて、 引っ搔き回してプレイできるもんね」
――エドも「スタジオの雰囲気は最高だっ た」と語ってたけど、これまでに伝えられて きたあなたたちのスタジオ風景と言えば、 「みんな深刻な顔をして悩み、ピリピリした 空気が漂う」みたいなものだったのに、随分 変わりましたねえ。
トム 「とにかく自信があったんだ。自信がな いままスタジオ入りすると、凄く重苦しい空 気に包まれてしまうだろ?今回の僕らには そういう暗さや重圧感はなかったんだ。何故 なら、たくさん準備をしてたからね。もしか したら、レデイオヘッドつ丨?くなく、ロサン ゼルスに行ってレコーディングしたからかも しれないな。ナイジェルに支払いをして… …。とにかくこの、『レディオヘッドっぽく ない感じ』っていうのが凄くよかったんだと 思ぅ」
コリン 「凄く天気がよくて、太陽が照ってい て……これって、やっぱり重要だよね」
トム 「泊まったホテルも快適で、スタジオも よかったし。やっぱりどこか違う所へ行くっ てのはいいことだよね。それにちょうどアメ リカでレコーディングしてみるってことに興 昧津々でもあったんだ。そうすることで生活 の中に不思議な魅力が生まれてくるっていう か、とっても魅力的なものがアメリカには存 在するんだよ」
コリン 「特に僕らがレコーディングしてた所 はよかったよね。もし、あそこでレコーディ ングしてなかったら、破壊的なモードになっ てたと思うよ。物凄くドデ力くて、インダス トリアルな感じの建物で、まるで箱を積み上 げたような巨大工業都市みたいだったな。週 末には誰もいなくなっちゃってガランとした 無人状態になるんだよ。だから人との付き合 V、なんてしたくなくなるしね」
トム 「そうかな?僕はあそこにいる人たち と会うのも結構楽しかったけどね。とにかく 僕はたくさん食べ続けた。甘いものは特にね (笑)。ロサンゼルスに行くと数日間はもうパ クノ'?ク食べ続けるんだ。そうすると、あの鮮 やかな色合いが、自分の身体の中にも染み込 んでくるような感覚になるんだよ。でもその うち、一見健康に見えるけど、よく近付いて みるとやっぱり病気なんだ、みたいな感覚が わかってきて、『もう甘いものはたくさん』 って気持ちになって家に帰りたくなる。まあ でも、アメリカって取り憑かれるような変な 魅力を持ってるのは確かだよ」
――以前トムは「『キッド六』と『アムニー ジアック』を作っている時に、声に全く自信 を失ったんだ」と言ってたけど、今回のアル バムではあなたの歌の素晴らしさが加工され ることなく素直に提示されてますよね。自分 の歌に対して、自信を取り戻したり、改めて 歌う楽しさに気づいたりといったことがあっ たんですか。
トム 「あの時はとにかく自分の声に自信を失 ったんだ。『キッド八』と『アムニージアッ ク』を作った時、まるで自分の声が他人の声 のように聞こえてきて、これは自分の声じや ないって思ったんだよ。何故そうなったかと いうと、僕の精神状態がおかしかったからだ と思うけど……」
コリン 「他のレコ一ド以上に、今回のレコー ドにはヴァリエーションに富んだ曲が入って るよね。凄くいいと思うよ。風景のような言 葉で綴られた曲が入ってるわけだから、この 00に12ドルの価値を見出してくれると僕は 思うんだ」
トム 「ハハハノヽ!」
コリン 「素晴らしいよ」
トム 「いいこと言ってくれるじやないか。で、 どうやって自信を取り戻したかっていうと、 ライヴで歌っていくうちに歌いやすくなって いったんだよ。その時のことは今でもよく覚 えてる。2 ~3週間して、『うん、これだ! これが僕の声だ。この歌い方なんだ』ってこ とになったんだ。ヨーロッパ.ツアーに行っ た時は本当にI ^、気分だったよ」
コリン 「ツアーにいって正解だったんだよ、 やっぱり。何て言ったって観客にとってもよ かったわけだしね」
トム 「じや、またブリクストン-アカデミー でもやる?」
コリン 「いやだよ、それは」
トム 「とってもゴージャスなホテルに泊まっ て、最高の場所でプレイしてっていうツアー だったよね」
コリン 「そんなによくもなかったぜ。ホテル はビジネスマンばっかりでちょっとしらけち やったし」
トム 「だから、ホテルに感謝を込めて言った までだょ」
――トム、ヴォーカルに注目して最近よく聴 いている人はいるんですか。
トム 「僕は他人のヴォ一カルってのは本当に 聴かないほうだよ。マイケル-スタイプの声 とかビョ一クは別格だけど……目をつぶって 聴くといいんだよね。だけど僕はこういう事 実に気が付いたんだ、ほとんどのヴォーカリ ストが実際には歌ってないんだ。ロパクして るだけなんだよ」
コリン 「そんな夢を壊すようなことは言うな よ。で、今度は『サンタクロースはいない』 って言うつもりだろ?」
――(笑)。で、こうしてアルバムが完成し た今振り返ってみて、全体に通底している歌 のテーマには何かあったと思います?
コリン 「(この日、疲れ気味のコリンはメン バーの共通点と勘違いしたようで)僕たちが サッカーへの愛があるっていうのは共通して ないし」
トム 「僕の神経症はまだみんなに移ってない しね(笑)」
コリン 「みんなかなり違うよね。だからみん な興味の対象が違うのに、さも共通の興味を 持ってるかのように装うのがうまいかもしれ ないな」
トム 「(笑)それって最高だよ。ボリティカ ルに励ましあう仲間たちってことか!」
コリン 「じゃ1業はここで、トイレに行ってき ます(と言って立ち上がるコリン)」
トム 「おい、ちゃんと掃ってこいよ、コリン。 で、本題に入るとすると一僕が不安に駆ら れるもの、僕の神経症の特性にあったものを 歌い続けてきたっていう共通性はあると思う けど、同時に曲を書くことによって自分は 違う所へ動I、ていくんだっていう意識もある。 だからその一貫してるテーマ云々に関して言 えば、僕にはやっぱりよくわからないってこ とになるかな」
――「ボップ.ミュージックは時代の鏡であ る」とよく言われるけど、「ヘイル.卜ウー. ザ.シーフ」は今という時代の何を映し出し てるんでしょう?
トム 「ポップ.ミュージックは時代の鏡であ るべきだと思、うし、1業らの[ヘイノレ,トゥー. ザ-シーフ』は今という時代を反映してると 思うよ。なぜって暗闇の権力が働きかけて、 この世の中を乗っ取ろうとしてるからだよ」
コリン 「(トイレから戻ったコリンが笑いな がら部屋に戻ってきて)いやあ、まいった。 この部屋に鍵がかかってI、るのかと思って焦 ったよ。そしたらドアを押せばよかったの に、ずっと引いていたんだよね(笑)」
トム 「『ヘイル,トゥー.ザ.シーフ』は今 という時代を映し出してるかっていう話をし てたところなんだ」
コリン 「今の世の中に存在する脅威は何か得 体の知れないものなんだ。この世の中に起こ るかもしれないし、起こらないかもしれな い、わけの分からない恐怖感っていうのがあ ると思う。そういうものをある意味では表現 してるのかもね」
――「自分たちの音楽で世界を変えたい!」、 「せめて自分たちの音楽で、一時だけでも現 実を忘れて欲しい」、どっちのスタンスに近 いと言えます?
コリン 「今を楽しんでもらうってことだよ。 僕らは2年前の9月11日にベルリンでコンサ ートをしたんだけど、」
トム 「でもベルリン当局は、僕らのコンサー 卜を阻止しようとしたんだよ。たくさんの人 たちがなぜこんな時にコンサ一トなんかする のかって批判してきたのさ。それって凄く変 だろ?」
コリン 「きっと連中はこんな時にコンサート とは不^!憤でけしからんってことだったんだ ろうね。12,000人の観客のうち来なかったの は3人くらいのものだと思うよ。誰もキャン セルはしなかったんだ。あの日のコンサート はそれぞれの曲に今までとは違った意味が含 まれていて、余韻と共感が生まれたのさ。あ そこでは12,000人の観客との特別な空間が生 まれたんだ。こういうことがとっても重要な んだよ」
トム 「レコードだろうがライヴだろうが、何 の役にも立たなI、ように見えるかもしれなI、 けれど、違う言語による感情表現と考えるぺ きなんだ。音楽っていうのはみんなが一番使 いやすい言語で、少なくとも理解しやすいも のだと思う。そうI、う価値観を見下す必要は ないし、非常に神聖.なことだと思ったね。精 神的な満足感が得られたって感じで……たと えその音楽がディスコ.ミュージックだろう と精神的な仏教音楽だろうと、僕はどんなも のでも構わないと思う。自分たちにあったも のを聴けばいいんだよ。これっていう定義は ないのさ。
アメリカに住む一人の女性から凄く素敵な 手紙をもらってね……当時彼女は気分が沈ん でいて、ニューヨークのマンハッタンまで車 で通う途中いっも国歌をかけて、管楽器が鳴 る所で大声でわめきちらして気分を晴らして たって言うんだよ。それでいいんだ。僕も同 感したね。僕も同じようなことをして気分を 啃らしてたから。みんながどうやって共感す るのかなんてこと、とても言葉じゃ表わせな いと思うんだ」
――じやあこの新作は、こんな世界状況の中 で発表されることになったわけですけど、イ ラク戦争に関しては率直にどう感じてます?
トム 「イラク戦争のことを聞きたいわけ? (コリンに向かって)今、ここで議論すべき だと思う?」
コリン 「バンドのそれぞれのメンバーがいろ んな意見を持ってると思うよ。だからパンド を代表してっていう意見を出すのは避けたい んだ。個人的な意見として聞くならいいんだ けど、こういうインタビューの席じゃあね」
――反戦ソングを発表してるアーティストも 沢山いますけど、そういうことはやろうとは 思っていない?
トム 「今の状況の中で聴くと、このアルバム の中にもそういうふうにも取れる曲があると 思う。でもそれを書いた時には、このイラク 戦争は起こっていなかったんだ」
コリン 「随分前に作った曲でも今リリースす ると、そう捉えることができるかもしれない よね。それはそれで間違いとも、正しいとも 言えない。何かをクリエィトするといろいろ な意味が生まれてくる。みんながどう捉えて どう考えるかによるんだけど、それってコン サ一トに行くようなものだと思うな。矛盾点 と暧味さと複雑なもの力猫み合っているもの をみんなは期待してるんだ。『これだ!』つ てはっきり言い切るよりずっといいよ。誰だ って戦争を起こすことが間違ってるってこと はわかってるはずだろ?その事実は変わら ないのさ」
――最後の質問です。何と今年でレディオへ ッドもデビュー10周年になるんですけど、あ なたたちにとってはどんな10年でしたか。
コリン 「へえ、もうそんなになるのか」
トム 「ファースト,アルバムをリリースした のが92年か93年だから..そうか、10周年 か。でも僕らは18年もずっと一緒にやってき たんだよ。信じられる?」
コリン 「もう18年にもなるのか」
トム 「そうだよ、18年だよ。これってやっば り異常なことだよ。この間ある人に言われた んだけど、男ばかりでそんなに長い間一緒に いるなんて不健康でとても正常じやないって ……。僕たちは正常じゃないんだよ、やっぱ りね」
――デビュー当時にイメージしてた10年後の 自分たちはどんなものでした?今の自分た ちを比べてみて。
コリン 「10年後のことを想像するなんて恐ろ しくてできなかったよ」
トム 「鏡を視いて、『何なんだ、これは』っ て(笑)……。僕はいっも言い続けてたよ。 『お父さん、僕たちは世界を制覇します』っ て(笑)」
――(笑)この10年で、レディオヘッドが成 し遂げた最大のものは?
コリン 「サウス.パークのギグは最高だった ね。凄く重要だった」
トム 「アメリカのチャートで!'10.1っていう のもあるよね」
コリン 「うん、そうだった。他にもいろいろ とぁるょ」
――逆に、やり残した最大のものは?
トム 「やりたかったのにやれなかったことは ……そう、世界平和達成かな」
コリン 「うん、そうだね、世界平和だ。これ だよ、これ」





